
稲田本店
私たちは江戸時代より続く鳥取県米子市にある老舗酒蔵です。
地元山陰の地酒文化を守りながら延宝元年(1673年)より現代まで酒造りに精進して参りました。秀峰大山山麓の豊かな自然に囲まれて醸される蔵元の清酒は 『稲田姫』『トップ水雷』の銘柄があります。
酒造りに適した風土の中、「いい水」と「いい米」があり、そして酒造りに情熱を傾ける蔵人がいる。
これらすべて一体となり『稲田の酒』は生まれます。
創業以来350年の伝統を持つ私たちですが、その取り組みは伝統を守るだけではありません。全国に先駆けてさまざまな取り組みを続けてきた結果、今があります。
新しいことに対しても凝り固まった考え方で否定するのではなく、まずはやってみる、取り組んでみるという心で、伝統を一つ一つ、積み上げてきました。
稲田本店の酒造り
お酒造りとは心がすべて
新しい取り組みは、過去の伝統の裏付けがあってのものです。
杜氏・信木真一は、先代杜氏・折坂薫の「お酒造りとは心が全てである」という想いを引継ぎ、蔵人一丸となって酒造りをしております。
創業350年を超え、400年、500年と愛されるお酒造りのために、心をベースにした酒造りを続けていきます。



稲田本店の酒造り
酒米作り
稲田本店では、酒米“五百万石”の栽培を行っています。鳥取県南部町にある約3反の田んぼです。例年通り、酒造りシーズンを終えた蔵人を中心に、地域の方々にもご支援いただきながらの米作りです。蔵人からすると、米作りは正直大変です。収穫できる酒米は、シーズンの酒造りに必要な酒米の量から考えると、極少量です。会社から田んぼは車で30分と離れており、夏の暑い時期に草刈りや水の管理など手間がかかります。
自分たちも酒米を育てることによって、まず、米作りの流れや稲の育ち具合、その年の気候の特徴を感じることが出来ます。農家さんに見聞きしたことだけでなく、自分たちの経験として酒米を栽培することによって、酒造りにつなげていくことが出来ます。酒米の様子を見て、酒造りの最初の工程“洗米作業”で米に吸収させる水の量を調節し、対応していきます。
日本酒の材料は基本、米と水。米の品質はお酒の出来に大きくかかわってきます。酒米にしっかり向き合うことによって、美味しいお酒造りに必ず繋がっていくのだと思います。
稲田本店の酒造り
麹室
室温36度 湿度32%の麹室。動いているとじわじわ暑くなってきます。大吟醸クラスの米麹、粒の大きさは半分以下。蔵人は、米麹を手で擦りほぐし、さらにふるいにかけていきます。一粒も無駄にできない気持ちです。
一晩置いた米麹は、自然と温度を上げてほかほか状態。何かで温められたかのような、熱さ。菌のちからに改めて驚くほどです。温度を調節するため、杜氏がかき混ぜて空気に触れさせます。緊張感と蔵人の連携が伝わる早朝の蔵仕事です。




稲田本店の酒造り
床もみと切り返し
早朝、麹菌を蒸米に振りかけ、均一に付着させる「床もみ」を終えた蒸米は、夕方になるとかなり硬くなります。
夕方から、その蒸米を手でほぐし、蒸米の水分、品温を均一にしていきます。
この蒸米。思った以上に硬く、ほぐすのに結構力が必要です。
しかも、室の中は約35度。
さらに体力消耗しますが、
蔵人は半袖で、黙々と作業します。
終業時間まで作業は続き、
室を出ると外は真っ暗。
そして翌朝早くから、再び作業に取り掛かります。
稲田本店の酒造り
袋吊り
醪の詰まった酒袋を吊るし、酒の重みで自然と滴ったものだけをとるとても贅沢な搾り方です。物々しい雰囲気で始まった作業は、圧倒されるスピードと蔵人の熱量です。蔵人全員で分担して、どんどん酒袋を吊るしていきます。袋吊りは時間との勝負!全ての作業が終わった瞬間、ようやく蔵人の顔がほころびます。
蔵人の力と気持ちを総動員して、お酒を造っています。




稲田本店の酒造り
【甑(こしき)倒し】
甑倒しとは、その年の仕込みの作業を終わることを意味します。
酒米を蒸すための道具(甑)が最後の役目を終え、横に倒して洗う事からこのように呼ばれています。
蔵人が心をこめて造った稲田本店のお酒を、ぜひこの機会にご賞味ください。